今日のブログは特別企画。先日こんなランキングが発表された。2021年10月期TVer総再生回数ランキングだ。これによるとドラマ『最愛』が2000万回超で堂々の首位になった。さらに注目すべきなのが20位までが軒並みドラマで埋まる中、1000万回再生で第10位に食いこんだ『水曜日のダウンタウン』である。第20位の『和田家の男たち』が490万回再生であることからバラエティ部門において2位に少なくともダブルスコア差をつけて、圧勝しているのである。
これは一体どういうことなのか?TVerのマイリスト登録者数とランキングの変遷を軸に今のバラエティ番組のあるべき姿を考えてみようと思う。
ランキングで"異彩を放つ"フジテレビ
TVerでバラエティ番組部門のランキングが公表されたのが2021年4月期からだったので、それまでのランキングの変遷を作成した。僕は先日「『水曜日のダウンタウン』初の首位」とツイートしたが、実際は2連覇だった。ここで訂正してお詫びする。こう見ると上位の番組はほぼ固定化されているように感じる。
違法アップロード数TBS内圧倒的1位と言われている(過去の藤井健太郎氏の発言より)『水曜日のダウンタウン』は2020年12月より満を持してTVerに参入するとあっという間に毎回ランキング入り。遂にクール別再生回数でバラエティ番組部門を2連覇する"鬼番組"に成長した。
このランキングで分かるのは出演者(特にMC)に対する圧倒的な信頼だろう。TVerはTEENからF2、M2層まで幅広く利用されている。そういった中で「松本人志」「有吉弘行」「マツコ・デラックス」「千鳥」といった幅広い世代から支持を得ている芸能人の番組は再生されやすい傾向、なおかつ上位に君臨する番組は『ロンドンハーツ』や『月曜から夜ふかし』といった「圧倒的なブランド」を誇っていると考えて良いだろう。
そんな中、異彩を放つのがフジテレビだ。『人志松本の酒のツマミになる話』『突然ですが占ってもいいですか?』はいずれもこのランキング常連、前者はその都度ランキングの順位を伸ばすなどの好調ぶりを見せている。一体何故なのか自分なりに考えてみたい。
『人志松本の酒のツマミになる話』はコロナ禍によって従来の企画が出来なくなった『ダウンタウンなう』から生まれた新企画をそのまま番組化させたもの。『人志松本のすべらない話』のフォーマットをユルく活用し、お酒を飲みながらトークをしていく番組だ。僕はこの番組について「意外性のあるキャスティング」「すべらない話というフォーマットの安定感」「松本人志に対する絶大な信頼」が人気の要因なのではないかと思う。
この番組はかなり幅広いところから意外性のあるキャスティングをすることが多い。酒井美紀さん、観月ありささん、濱田龍臣さん、美山加恋さん、清水翔太さん、根本宗子さんと文化人、俳優、アーティストと多業種からまさに意外性のあるキャスティングをする。それが見たことない掛け算になるが、松本人志さんはじめ、千鳥のおふたりとフィットし、ハマっていくのだ。
また「すべらない話」のフォーマットの安定感は堅く、そこに「本音でハシゴ酒」時代のキーワード"お酒"を掛け合わせて上手くハマっている気がする。ユルくトークすることで金曜の夜にちょうど良い、またタイムシフトで深夜に見てもちょうど良い番組になっているのだ。
そして松本さんに対する絶大な信頼だ。ダウンタウンの若年層人気は高く、今年の『水曜日のダウンタウン』の女子高生が好きな芸人ランキングでも「JKワーキャー芸人」として第4位にランクイン。松本さん自身も『ワイドナショー』での発言、Twitterでの発言が大きな話題になるなど、"国民はみんな松ちゃんの話が聞きたい"状態なのである。そういった点において、松本さんのプライベートの話、また千鳥、フットボールアワー、さまぁ〜ずといったMC陣の貴重なトークが聞ける番組として重宝されているのだと感じる。
異彩を放つのがもう1つ。『突然ですが占ってもいいですか?』である。2020年、彗星の如く現れた占い番組はまさに今フジテレビにとって無くてはならない番組になりつつある。
当初は街中の一般人に占い師が話を伺い、占っていく番組であったが、コロナ禍と共に芸能人を占う内容へとシフト。それが功を奏し、2020年秋頃から「占いをプライム帯でやってんの??は?」といった世間の呆れの声を徐々に跳ね返していくようになる。
今では「推しが出ていたら必ず観る番組」になっているが、占いをめっちゃ信じて、信じ抜くような番組ではない。
鶴瓶さんの徹底された取材からその人の素顔を紐解いていく『A-STUDIO+』、食を通してその人の素顔を引き出す『人生最高レストラン』、もうひとりのワタシをファッションを通じて発見していく『おしゃれクリップ』と並ぶように、占いを通して「今まで誰にも言えなかった過去が明かされていく」番組がこの『突然ですが占ってもいいですか?』だと思っている。
占いで貴方はこうです!とハッキリ断定していく宗教めいた番組ではなく、占いはあくまでもその人の人となりを明らかにしていく"手段"にしか過ぎない。占い結果からその人がこれまで明かさなかった思いを語る番組だと思う。そういった点においては「素顔を引き出す系のトーク番組」の新たな1ページを捲ったのではないかと思う。また根本的に占いへの人々の需要は高いのも要因の一つだと言えるだろう。
ここまでは今回のランキングから異彩を放つフジテレビについて紐解いていった。ここからが本題だろう。
『有吉の壁』から考える幅広い世代に支持されるということの重要性
今回のランキングをマイリスト登録者数と擦り合わせて考えていく。そうすると全てが少なくとも50万登録超、100万回登録を超えるものが6番組を占めている。
またこの再生回数ランキング、10月クールの"総再生回数ランキング"であることから放送回数が再生回数に直結しているとも言えるのではないか。この上位10番組はいずれも毎週しっかり放送されている。そう考えると毎週休まず放送することはリアルタイムでの視聴習慣のみならずタイムシフトの視聴習慣にも繋がるのではないかと考える。
そういった点において"通常編成"がどれだけ大切か痛感させられるものがあると思う。
この中で興味深いのが『有吉の壁』である。『有吉の壁』は小中学生の人気が非常に高いが、それと共に高校生以上の若年層全体からの人気も非常に高いことが証明されている。他の主な小中学生・ファミリー層に人気の高い番組のマイリスト登録者数も調べてみたが、多くても30万登録までである。(それでも凄い)
なぜ『有吉の壁』はここまで人気になったのかは説明するまでもない。ただ高校生以上の若年層にゴールデンタイム、しかも19時台の番組がここまで支持されることは珍しすぎるだろう。
その理由は「メディアミックス展開の上手さ」と「それぞれの芸人・キャラに対する圧倒的な支持」にあると思う。
まず「メディアミックス展開の上手さ」。
『有吉の壁』では公式Twitterで「ウザくない宣伝」をする数少ない番組である。またそれぞれの芸人に対する粋なツイートも見かけることから幅広い世代に入口を作りやすい環境になっていると考える。
また公式YouTubeチャンネルではそれぞれのキャラクターの特別企画やOPトークを先行配信することで「有吉の壁の空気」を感じることが出来る。OPトークをHuluではなくYouTubeで、というのはかなり上手い戦略である。
そして地上波の壁を超えられなかった未公開シーンや芸人による反省会はHuluで流れている。
さらに『有吉の壁』はキャラ芸人の人気沸騰ぶりから武道館ライブやKOUGU維新のクリスマスイベントを開催。いずれも大反響を博した。
つまりTwitter(入口)→YouTube(見学)→地上波/TVer(実際に体験)→Hulu(沼・重課金コース)→武道館・DVD(最終目的地)という道筋をしっかり作っている完璧な番組なのだ。まさにメディアミックスとはこのことだと思う。こういう地上波にとどまらず、さまざまな発展をさせることで今のテレビを見る機会が少ない・サブスクリプションで好きなコンテンツを見ることが当たり前な若年層も上手く掴めている。
また「それぞれのキャラに対する圧倒的な支持」もこの番組を大きく前進させた要因である。「ブレイク芸人選手権」ではTT兄弟、KOUGU維新、ストレッチャーズ、Mr.パーカーJr.、安村昇剛など多くの人気キャラクターを生み出した。またこの番組によってシソンヌはお茶の間に本格的に認知されたり、もう中学生は再ブレイクを果たすなど、芸人の転換期にもなっている。ではなぜここまで『有吉の壁』は熱狂的ファンを生んだのか。それは先述した完璧なメディアミックスの道筋もあるが、「推しが評価されたら嬉しい」と同じメカニズムである。それはオーディション番組にも共通することで、推しがプロデューサーに褒められたら嬉しいと言ったことと同じだと思う。
また例えば❌が出ても、それがパンサーのようにお決まりになっていたりするし、その評価を全て「有吉弘行」に委ねていることがこの番組最大の魅力であることは間違いない。
例え❌を出されても有吉さんなら愛あるダメだしをするという"国民が有吉弘行の評価を知りたがっているのだ"。それがこの番組をここまで押し上げた要因であると考える。だからこそファミリー層向けの番組に留まらず、若年層全体から支持されて、TVer再生回数ランキングに入る人気番組になったのである。
一方でビデオリサーチ調べによる世帯視聴率の娯楽部門にランクインする番組のマイリスト登録者数はどうなのか?調べてみると凄く意外なデータが見えてくる。
NHKの『ブラタモリ』やTVer配信をやっていない『笑点』は除き、主な筆頭番組でまとめてみた表がこれである。
いずれも10万台~20万台に留まっており、TVer再生回数ランキング上位10番組と比較するとTVerでそこまで回っていないことが分かる。
そんな中、世帯視聴率・リアルタイム視聴率だけを狙っているのが『プレバト!!』だ。マイリスト登録者数は10万人を割るなど、毎週世帯・個人視聴率で横並び首位を獲得する番組とは思えないほどの低さである。こういった今の時代と逆行した番組が敢えてあっても良いと僕は思う。
一方でやはり若年層人気が高い『世界の果てまでイッテQ!』はこの10番組の中で唯一70万人を超える登録者数を持つ。世帯・個人視聴率も高く、なおかつTVerマイリスト登録者数も多いのはこの番組くらいなのではないか?と思うくらいだ。
意外だったのが『ザ!鉄腕!!DASH!!』と『ぐるぐるナインティナイン』の少なさだ。
前者は放送休止しただけで番組名がトレンド入りするほど人気なはずだが、意外とTVerマイリスト登録者数は落ち着きを見せている。これは日曜19時台というお茶の間でリアルタイム視聴する人が多いということなのか?
後者はまさにリアルタイム視聴に振り切っていると感じる。クビを生放送で決定、新メンバー発表をめちゃくちゃ煽り、ゴチ最下位はしっかりCM跨ぎで焦らす、もはや日テレのお家芸が詰まっている。そう考えるとこの登録者数で落ち着くのは納得がいくのである。
最後に考えたいのが若年層に人気の番組である。若年層が観ている番組として多く名前が挙がるような番組の登録者数はどうなっているのか?総再生回数にランクインはしなかったもののいずれも人気の高い番組について10番組+ラヴィット!を挙げて考えてみることにしたい。
まず外せないのが『ラヴィット!』である。遂に2021年11月よりTVer見逃し配信を開始。プレゼントキーワードはトレンド入りするなどその人気がお笑いファンを中心に広まっているが、TVer見逃し配信開始3ヶ月ということもあり、登録者数はまだまだといったところか。僕の周りにも『ラヴィット!』についてあまりピンと来てない人も多く、世間的な浸透はこれからだと考える。
またそれ以外の10番組は若年層がよく視聴していると思われる番組である。ランキングに入りそうな匂いもするが、放送回数が少なかったり、内容によってバラつきがあったりとといった番組が多い気がする。また若年層はサムネイルが大きな評価基準になっていることから、回によってはスルーする場合もあるだろう。
そう考えるとこの10番組は
- ゲストに左右される…『しゃべくり007』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『全力!脱力タイムズ』『マツコ会議』
- 放送回数が少ない…『あざとくて何が悪いの?』『バナナサンド』『かりそめ天国』
- 内容への関心度に左右される…『激レアさんを連れてきた。』『ゴッドタン』『モニタリング』
と主に3つに分けることが可能である。
1つ取り上げるとすれば、僕の好きな番組になっちゃうのだが、この春深夜帯への枠移動が決まった『あざとくて何が悪いの?』は今後総再生回数ランキングへのランクインが期待されると思う。年越し特番はランキング2位まで上昇、番組プロデューサーの芦田さんによると毎回「ドラマ並みの驚異的な再生回数」と言われる当番組は、深夜帯へ移動することで内容・放送頻度ともにさらなるステップアップをすることに期待したいなと思うし、いち番組ファンの僕としては時間帯が繰り下がることは正直言って残念だなと思いつつも、深夜帯で永続的に続いてくれたら、それはとても嬉しいことなので、今は時間帯繰り下げを前向きに受け止めている。
またこの10番組も堅い支持を獲得しており、今後、現時点でランクインしている10番組に脅威になることは間違いない。
今後TVerという指標が今よりも大事になっていくことは間違いない。登録者数、再生回数を伸ばすにも、地上波で姑息な2時間SP、3時間SPはやめて、毎週放送することが吉だと考える。それこそが各番組のコンテンツパワーを伸ばすことに繋がると思う。
せかもり
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