視聴率は好調・内容は微妙…「月9」枠はどうあるのが正解か。

久々の「メイントピックス」企画です。もう形骸化しかけてますが、このHPはもともと架空の27時間テレビを考えたり、クールごとのドラマの感想を総括する用に作られたので、本来あるべき姿はこうなんですよ。

今日は最近の「月9」枠について話したいなと思います。今日こんな記事が配信されましたね。
これに感化されたというわけではないんですが、やっぱり最近の月9に対する"違和感"というのはみんな感じていることなのかなと思います。最近の月9枠がどうなっているのか分析してみました。

同じフォーマットが連続していること

これはやはり結構ドラマをよくご覧になる方は感じるんじゃないかなと。月9に限った話では無いですが。
まず前提として、引き合いに出した記事にあるような「1話完結の話」をしたいんじゃない。「主人公が変人・サブキャラ(主にヒロイン)が堅物」という構図の作品があまりにも多すぎるという話をしたいということ。
今回の『イチケイのカラス』も竹野内豊さんが"変人"の裁判官で新しく入ってくる黒木華さんが"堅物"で正義を貫く裁判官なんですよ。で、竹野内豊さんがなんか行動を起こす度に「そんなの私は許しません!!」って黒木華さんが言う。ドラマだし、フィクションだし、1つのドラマの特徴を示すことにおいては何ら問題ないですが、この作風・フォーマットを用いた刑事・医療ドラマがあまりにも多すぎるということ。『絶対零度』も『SUITS』も『トレース~科捜研の男~』も『ラジエーションハウス』も『シャーロック』もみんなそうなんですよね。そういうフォーマットで観てくれる視聴者は普通にいると思うし、尚且つ1話完結だから、視聴率は獲れると思うけど、作品としての価値を落としてしまっているなと感じるし、そういうドラマは連続して最後まで観ようとは思わないんですよ。
正直「"堅物"が主人公で"変人"がサブキャラ」(『イチケイのカラス』の原作漫画のフォーマット)とよくあるフォーマットを少し変えてみるだけでも他のドラマとの差別化が図れて、見応えが増すと思うんですけどね。

フジテレビドラマの転換は2018年4月期

ではフジテレビドラマはどこから変わったのか。僕はフジテレビの社長が亀山社長(当時)から宮内社長(当時)に変わったことがまず転換期の前フリだと思います。その宮内社長の改革が一番強く現れたのが2018年4月改編。ということは2018年4月クールからフジテレビドラマは完全に変わったということ。
数々のドラマの制作に携わってきたフジテレビ石原隆取締役は2年前のインタビューで「『コンフィデンスマンJP』の企画から"今後月9はどういう番組を掲げていくか"を一から検討し、組織的にも人員配置的にも改革を行ってきた」と語っている。これにより少なくとも月9の転換期は2018年4月期ということが明確となっている。

実際、2018年4月期のフジテレビドラマは月9が先述した『コンフィデンスマンJP』、木10は『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』を放送した。どちらも世帯視聴率を見れば、良い成績では無かったが、前者は2度の映画シリーズ化(いずれも大ヒット)、後者は同じキャスト・スタッフで『シャーロック』を制作とフジテレビに大きな功績をもたらしている。

余談だが、シンクロするようにこの時のカンテレ火9ドラマ『シグナル』も今年映画化した。

またこの2つの作品はどちらもギャラクシー賞、コンフィデンスアワード・ドラマ賞の主演女優賞・男優賞を受賞した。ということは視聴率では測れない点で大きな評価を得たということだ。

この2作以降のフジテレビドラマはこれまでのいわゆる"キャスト重視"から"内容重視"に転換したのだ。これまでのキャスト重視時代の例を挙げるなら、福山雅治さん主演の月9『ラヴソング』や松嶋菜々子さん主演の木10『営業部長 吉良奈津子』が該当するのかなと。

ちなみにフジテレビ側は『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(2018年版)から月9は変わったと主張しているが、以上の事柄から月9枠、フジテレビドラマの転換は2018年4月期からだと僕は主張する。

逆転現象が起きている~月9の"木10化"と木10の"月9化"~

最近のフジテレビドラマはまさに逆転現象が起きている。それは月9が"木10化"、木10が"月9化"だ。それが顕著に現れるようになったのは2019年7月期・2020年10月期の『監察医 朝顔』と『ルパンの娘』だ。

『監察医 朝顔』については月9にかつてないヒューマンホームドラマ&法医学ミステリーの複合系。「東日本大震災による津波で行方不明になった母を探す家族の物語」である。ここまで重いテーマを掲げた月9ドラマはこれが初めてだと思う。『監察医 朝顔』は日本中の人々の心に刺さり、2018年4月期以降の月9で一番の大ヒット。第2シーズンは2クールに渡り、放送されるなど異例の編成が行われた。僕はこのドラマを"令和版北の国から"だと思っている(『北の国から』は木10で放送されたことはない)。こんな重いヒューマン&ミステリードラマを恋愛ドラマばかりやってきた月9に持ってくるのは数年前なら考えられ無かっただろう。大ヒットした『Dr.コトー診療所』、倉本聰脚本『風のガーデン』、坂元裕二脚本『それでも、生きてゆく』などこの類のドラマは木10の方が放送実績がある。だが月9に持ってきた。僕は月9の変化を如実に感じた瞬間だった。

また木10も"月9化"している。2018年4月期以降も『グッド・ドクター』、『アライブ がん専門医のカルテ』、『アンサング・シンデレラ』など木10が得意する医療ドラマも放送してきているが、一方で『ルパンの娘』は異例だった。泥棒一家の娘が警察一家の息子に恋をする"禁断のラブコメ"。この類のドラマは月9の方が得意なはずだ。勿論、木10でも以前から『最高の離婚』、『ラスト♡シンデレラ』、『昼顔』など数々の恋愛ドラマを放送してきたが、それらはいわゆる"大人向け"なドラマであり、10代~20代よりかは30代、40代をメインターゲットにしていた。しかし『ルパンの娘』は違う。『ルパンの娘』は3歳から楽しめる。めちゃくちゃ極端な表現だが、僕はそう思う。『ルパンの娘』時間が浅い月9枠の方が良いのではないか。僕はそう思った。だがそれを敢えて木10に持ってくる意図は何なのか。ちなみに『ルパンの娘』第1シーズンの次は『モトカレマニア』。『モトカレマニア』もかつてなら月9で放送されていそうな作品。そして木10の"月9化"が明確になってきたのが、『ルパンの娘』第2シーズンから。今年に入り『知ってるワイフ』『レンアイ漫画家』とかつてなら月9で放送されていそうな若年層をターゲットにした作品が次々に木10で放送されている。まさに木10が"月9化"していると思った。これはあくまでも僕の推察だが、視聴率指標が変わったこと、TBS火曜ドラマが恋愛ドラマ路線で成功したのを観て、活路を見出し始めているがこういう路線変更をもたらしているのかなと思っている。

またフジテレビ全体のドラマ枠が減ったのも現在残る2枠の明確な路線変更が露わになっているのかなと感じる。昔は重厚なドラマは木10でもやっていたが、2015年までフジテレビ制作だった火9ドラマでも制作されていた。また水10枠や日9枠も過去にはあり、あらゆる作品を一度に放送出来たが、現在は2枠しかない。これも月9と木10が逆転したと感じる一因なのかもしれないと思う。

フジテレビの月9と木10の逆転現象についてはこちらの記事でも少し触れております。

月9はなぜ恋愛ドラマをやらないのか

今、月9がどういうポジションにいるのか?と言われたら僕は「旬のキャストがテレ朝みたいなことをしている」と答えます。フジテレビはそこに活路を見出したと思うし、今はまだそれで良いのかもしれないが、飽きられるのは時間の問題。というか"職業変えているだけでやっていること同じ"という指摘はかなり正しい。

フジテレビは2015年~2017年まで月9枠の恋愛ドラマを重視してました。特に『恋仲』→『5→9』→『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』→『ラヴソング』→『好きな人がいること』→『カインとアベル』→『突然ですが、明日結婚します』と7作連続で恋愛ドラマをやった時期もあった。しかし『いつ恋』から世帯視聴率の低下が見られ、『ラヴソング』以降は平均視聴率が6~8%、当時のネットニュースでは「月9はオワコン」と叩かれ、放送したドラマは「他局に似てる」などと揶揄された。今月9に恋愛ドラマを求めている人は月9最大の"暗黒時代"を知っているのか?僕は問いたい。僕もここらへんの月9も観ていたが、『ラヴソング』以降は内容面においても到底「凄く良いドラマ」とは言えない感じだったのを記憶している。だから僕は月9に対して恋愛ドラマは求めてない。むしろ木10が若年層に支持される恋愛ドラマ枠として成長してくれればなと思っている。

ただ『コンフィデンスマンJP』や『ルパンの娘』のような良い意味で「フジテレビらしい家族で楽しめる」作品を視聴率が安定しない木10ではなく、出来れば月9でやって欲しいなと僕は思う。(『コンフィデンスマンJP』はもともと月9枠だが)。

と、まあそんな感じです。視聴率に固執することなく、記憶に残るような良質な作品、同じフォーマットで職業を変えるんじゃなくて、また違うフォーマットのドラマも作って欲しいなと僕は思います。
ちなみにこういう質問が僕のマシュマロに来ました。僕は石原さとみさん×坂元裕二さん脚本をやって欲しいなと思ってます。ジャンルは何でもいい。これまでの石原さとみさん、これまでの月9とは違った色を見せられるのでは?と僕は思ってます。

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せかもり